第12章 会いたい。死ぬほど
きっと、こうなる日を夢見てLioは 尋常では無い努力を重ねて来たに違いない。
そんな念願の瞬間に、俺の身勝手な告白で 水を差して良いはずがない。
俺はくるりと彼女に背を向けた。
「そうか、結局会わなかったんだね」
「…まあな」
天と龍之介は、バーを出たところで待っていてくれた。
「彼女なら…絶対にすぐ有名になる。それに、ボク達もね。
だから、いま会わなくたって 嫌でも近いうちに再会することになるよ」
天は当たり前のように言ってのけた。
「そうだよ!それでいつか、一緒に仕事が出来たら良いよね」
龍之介もキラキラとした笑顔を浮かべる。
「…そうだな」
そうだ。何も焦る必要などない。俺とLioは、絶対にまた再会する。
2度目があったのだ。3度目だって、きっとある。これは 確信めいた ただの予感。
その時にこそ、今の気持ちを伝えれば良い。
って、思って疑っていなかった。
一体、誰が予想してた?
Lioが、その日を境に 姿を消すなんて。
勿論、俺は必死になって探した。MAKAにいくら聞いても 知らぬ存ぜぬを通す。Longhi'sのマスターも、絶対に口を割らない。
勝手に親父のコネを使って調べたりもした。しかし結果は惨敗だった。ただ、これは噂話の域から出ない話だが…
彼女と契約を結ぶ為に動いていた芸能事務所 数社には、謝罪と辞退が綴られた文書が送られて来たらしい。
突如 お前は消えた。
俺の中に、燻ったままの熱だけを残して。
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