第97章 諦める理由にはならねぇだろ？

※


「固まってたところで、いつまで経っても終わらないぜ。さっきまで美味そうに口動かしてただろ。

咥えろ」


冷酷。それでいて、滾った瞳が見下ろした。
私だって分かっている。この地獄の終わらせ方を。

脳は変わらず熱いままだが、作業を再開させた。


「…や、めろ…、待て、春人…」


眉を寄せ、顔を歪め、細い声で言う。
いつも堂々として、自信に満ち溢れた八乙女楽の姿は、そこにはなかった。
しかし。私は口と手を休めない。自分と楽の為に、一刻の早く終わらせてしまいたい。

虎於の、良いところを探す。
幹の下を、少し強い力で握り込んで擦り上げる。そして、括れの段差に舌先を這わせた。さきほどから、これをした時に彼は良い反応を見せていたのだ。


「っ…は ぁ。お前、やっぱり慣れてるな。もう俺の良いところも見つけたみたいじゃねぇか。
まぁ当然と言えば当然か。今までもこうやって、TRIGGERの為に仕事を取って来てやってたんだもんな？」

「な…なに、言って…んなこと、あるわけねぇ だろ」

「っく、八乙女はあぁ言ってるけど。実際はどうなんだ？
なぁ。春人」


両手は動かしつつも、僅かに顔を持ち上げる。


『たとえそうであったとしても。アイドルがそれを知る必要は一切ない』

「……だ、そうだ。つまらない答えだな。思わず萎えそうになる」

『楽』


名前を呼ぶと、彼は青白い顔をこちらに向けた。私の口元から、粘度の高い液体が つぅと一筋滑り落ちる。


『申し訳ないんですけど、少しそこで、じっとしててもらえますか？大丈夫。すぐに終わらせますから』


大丈夫。おそらく、私は上手く笑えてる。