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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第97章 諦める理由にはならねぇだろ?




こんな場面を目撃されてしまえば、言い逃れは不可避だ。心臓が早鐘を打ち、嫌な汗が背中を伝う。


「あらあら。まさにお楽しみ中でいらっしゃいましたね」


笑顔でやって来たのは、巳波であった。彼の言葉から、どうやら虎於と彼は共犯であることは窺い知れる。腹は立つし、こういう行為を人に見られる趣味もないが、外部の者に目撃されるよりは随分ましだ。


「遅かったな。お2人さん」


虎於は、悠々と言ってのけた。
2人 と。じゃあ、巳波と、あともう1人は、一体 誰。

私は、まるで見えない糸に引かれるようにして 顔をあちらに向ける。巳波の横に立っていたのは…

収録を終えたばかりの、楽だった。


全身の毛穴が、開く心地。
とてもじゃないが、彼の顔を見つめ続けることなんて出来ない。すぐ様、大きく顔を背けた。

それでも、もう楽の表情が目に焼き付いてしまっている。ひどく狼狽し、見開かれた目。何かを言いたげに、薄く開かれた唇。目の前で何が行われているのか、理解出来ないという顔をしていた。


「もう少し早く来たら、こいつの可愛いイキ顔が見られたのにな」

「ふふ。御堂さんは、なかなか良いご趣味をお持ちですね。下劣で、素敵です」

「それ、褒めてるか?」


虎於の狙いは、分かった。私が自分に奉仕している姿を、楽に見せ付けてやりたいのだろう。

どうして、相手に龍之介ではなく楽を選んだのか。今それを考える余裕はない。不慮の事態に、頭がパニックだから。
それは楽も同じようで、未だ何一つ言葉を口に出来ていない。

収録が終わったばかりのスタジオ。まるで祭りの後のような寂しい喧騒だけが、私達を包んだ。

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