第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
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いよいよ、その瞬間が訪れる。
あの3人の歌声が、私を包んだ。本当なら、間近で観たかった。傍で聴きたかった。そんな歌声を、今の私は…
こんな形で耳にするなんて。思考が絡まって、バグを起こしてしまいそうだ。
「…TRIGGERの歌が始まったら、あからさまに締まったな。はは、あいつらのこと、好き過ぎだろ。あんた」
『は ぁっ…、はっ、ぅ』
指を2本に増やし、ゆっくりと壁を擦る。勿体付けて、ねっとりと、焦らすように。
「だが、全く面白くない。選べよ、TRIGGERなんかより。この俺を。ŹOOĻの、御堂 虎於を」
そう言って、自らの滾った欲熱を、私の体に押し当てる。
「ほら。そろそろ指じゃなくて、これが欲しいだろ?正直に、言っちまえよ」
『…っ、クソ 食らえ…!』
「おいおい。それが、抱かれたい男1位に吐く台詞か?こんなチャンスは、もう巡って来ないかもしれないぜ?」
『は…っ、はぁ…! 元 1位の男は…その地位に感謝こそしていましたが…、そんなふうに、自慢は…しなかった』
私達は、絶対に外へ声が漏れ聞こえぬように、互いの耳元に口を寄せて言葉を交わす。
そして、私がいま紡いだ言葉はどうやら、彼の不興を買ってしまったらしい。
乱暴に片脚を大きく持ち上げられる。それから、より深く指が奥へと突き立てられた。一際大きな嬌声を抑え込む為、私は虎於の衣装を強く噛んだ。
「俺の相手をしてる時に、他の男の話なんかするなよ。無粋だろ」
肉芽を他の指で刺激しながら、中を激しく掻き回す。彼には初めて触れられたというのに、私の全部を知り尽くされているかのようだ。それほど的確に、快楽を強制的に与えてくる。
「…イケよ。その時は、俺の名前を、呼びながらな」
『〜〜っ、ぅ…ぁぁ、くっっ』
「ほら…どうした?我慢、しなくても…いいんだぜ?」
『っ、は…、…っと、ら…、』
「聞こえない」
『っ…虎 於…、とら おっ、イ…くっ、ふ…ぅっうぅ』
TRIGGERの歌は、もう聴こえなくなった。