第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
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『〜〜っ、ふ…ぁ…、んっ 』
相手への愛がないと、キスなんて気持ち良くない。そんなことを言ったのは誰だろう。それとも、私が異様なだけなのだろうか。
まるで生き物のように蠢く舌は私を蹂躙し、味わったことのない快感を置いていく。それこそ、シナプスが焼き切れてしまいそうなくらい。
かくっと、片膝が折れる。しかし目の前の男は、優しく私を抱き留めたりなどしない。背中を壁に預けたくても、後ろはパーテーション。もたれ掛かることなど出来なかった。
自立する為に残された手段は、虎於に掴まることだけ。
私は両腕を彼の首の後ろに回して、体を支える他なかった。
その様子を見て、満足そうに瞳を細める虎於。右手は私の顎に添えられ、さらにぐっと顔を上向けた。そして今までよりも深く深く口付ける。
それから、私のベルトを左手だけで いとも容易く取り去った。バックルが地面に叩き付けられて、カシャンと冷たい音を響かせる。
ベルトがなくともパンツは地面へ下がりはしないが、彼の手が入るくらいの隙間は生んでしまう。
虎於は、すぐさまショーツの中へ指を差し入れた。その瞬間、私は身を縮こませる。
『っっ、』
「…へぇ。無理やりされて、ここをこんなに濡らして。あんた、悪い女だな」
『っ、う、るさ』
「そう言うなよ。俺は、悪い女が大好きなんだ」
『ひっ、う…!』
ぬるついた肉の回りを、複数の指で弄ぶ。水音が自分の耳にも届き、どれくらい濡れているのか思い知らされる。
「はは。TRIGGERがすぐ傍にいるってのに。こんなに興奮しちゃって。スリルは媚薬ってか?可愛いねぇ」
『っぅ、く…っはぁ…っ、』
「なんだ、もう反論する余裕もないか」
くちゅりと、虎於の中指が秘部に突き立てられる。
もうすぐTRIGGERの収録が始まるのだ。声など上げられるわけがない。
私は顔を虎於の胸に埋め、声を押し殺した。