• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第97章 諦める理由にはならねぇだろ?




再び、視界いっぱいに虎於の顔が広がる。妖艶に近づいて来る、人を快楽に落とす唇。私は手の平でそれを覆い、阻止をした。


『貴方…、正攻法で私を手に入れると言ってたでしょう』

「あぁ、それは気持ちの話だろ。体までそうしてやると、宣言した覚えはないぜ」


虎於は、口元を覆う手をどけて告げる。分かったら、さっさと続きをさせろ。ギラついた瞳が、そう語っていた。

私には、拒否権がないのだろう。もし拒絶したならば、彼がどんな暴挙に出るか分からない。矛先が私に向くなら良いが、おそらくそうじゃないだろうから。


『…分かりました。付き合います。ですが、場所を変えま』

「おいおい。萎えること言うなよ。それとも、本当に分かってないのか?
“ ここで ” するから良いんだろ」


私が眉を顰(ひそ)めた、その刹那。
威勢の良いスタッフの声がスタジオ内に響く。


「TRIGGERさん入られまーす!」


その声を耳にした瞬間に、この男の目的を悟る。


『貴方…本当に、良い性格してますね』


これには何も答えず、虎於は再び唇を重ね合わせた。

ちなみに。
私が最も懸念していること。誰かにこれを目撃されてしまうというものであるが、実はそんなもの、無用の産物であった。

私には知る由もないが、虎於に頼まれた巳波により警戒の目が光っていたからだ。もし誰かがこのスペースへ近付けば、ここは使用中だと追い返す算段になっている。

そうとは知らず、私の内面は少しずつ乱されていく。
緊張と、不安と呆れと増悪と。そして、快楽によって。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp