第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
「あ、あはは…こんにちは」
(早速会っちゃったなぁ。ど、どうしよう。何にせよ、険悪なムードは絶対 避けた方がいい。とりあえず、挨拶 かな?その後は…天気の話、とか?)
「えっ?こ、こんにちは」
(な、なんでこの人、俺なんかに挨拶するんだ?あんなヒデェことされたってのに。しかもめっちゃ笑顔だし。え?十龍之介ってもしかして良い奴?でも、こいつもTRIGGERだしな…。少しだけ、今日の話でも振ってみるか?)
「今日は良い天…!」
「この後って…!」
「え、あ!ご、ごめん!何かな?」
(うわぁ!まさかの被っちゃったー!)
「いや、べつに、何も…!」
(最悪だ!被っちまった!)
よし!ここは放置で大丈夫そうだ。なんて平和な世界線なのだろう。
巳波は各方面に聞き耳を立て、上品な笑顔を浮かべている。まるで、観劇でも楽しんでいるかのようだ。
問題なのは…楽と、虎於の組み合わせだ。この場に姉鷺が居ないことが悔やまれる。彼が付いていたなら、引っ張ってでもTRIGGERを楽屋へ連れて行ってくれただろう。
「どうも。
…へぇ。抱かれたい男ランキング1位の奴ってのは、やっぱり色気が凄いな」
「あぁ?」
「おっと悪い。“ 元 ” 1位様 だったな。今のトップは、この俺だ」
まさに、予想した通りの流れになった。虎於は楽の目前に立ち、分かりやすい挑発をかける。しかし意外だったのは、楽もまた笑顔を浮かべていたことだ。
「なんだ?はしゃぐなよ。ランキング1位が、そんなに嬉しいのか?」
「当たり前だろ。世間の声が、この俺を求めてる。快感以外の何物でもないね」
「なら、そんな称号いくらでもくれてやる。でもな、これだけは はっきり覚えとけ。
こいつだけは、絶対にやらない。春人は、将来また八乙女プロに返してもらう」
楽は虎於を鋭い目付きで睨みつけながら、私を指差した。