第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
次の日など来るなと、いくら願ったところで朝日は登る。重い腰を持ち上げて出社し、4人の面々を連れて局に向かおうと準備している時だった。
廊下の奥から、にこにこ顔でスキップをしながらやって来る男と遭遇する。
了だ。あぁいう様子の彼には出来る限り近付きたくないのだが、これは強制エンカウントである。
『おはようございます。見事なスキップですね』
「うん、ありがとう!君は今日も相変わらずクソ真面目顔でつまんないね」
真面目な顔で会釈をして、隣をすり抜けようと試みる。が、後ろから肩をがっちりと掴まれる。
「待って待って!僕ね、君のことを笑顔に出来る物を持ってるんだ!見せてあげるから少し待ってよ」
嫌な予感しか、しない。
了が、じゃーーんと背中に隠していた物を目前に持って来る。それは、有名なウィークリーマガジン。女性雑誌 inin である。
開かれたページに、仕方なく視線を這わせる。が、同時進行で了が文字を読み上げてくれた。
「抱かれたい男No.1に輝いたのは、ŹOOĻの御堂虎於!デビューして間もない新進気鋭のアイドルが、王者 八乙女楽を抜いて1位に!
ね!凄いでしょ!担当アイドルの大躍進だよ?勿論 君も嬉しいよね?あれあれぇ?その割には笑顔がないなぁ?」
『わぁ!驚きました!素晴らしいですね!まるで自分のことのように嬉しいですよ!
では。私はこれで』
お花畑満開の笑顔をサービスしてから、私は了の前から立ち去った。
背後から、小さな舌打ちが聞こえる。
「ッチ。本当に、つまんない奴だな」