第97章 諦める理由にはならねぇだろ?
いつかは、こういう日がやって来ると分かっていた。覚悟はしていたつもりだが、目前まで迫ると、やはり心は騒つく。
明日、TRIGGERとŹOOĻが番組にて共演する。
「大丈夫だよ。楽や天とも話してたんだ。たとえあの4人がちょっと失礼な態度だったとしても、俺達は冷静でいるように努めようなって」
『ちょっと、で済む気がしないから不安なんだよね。それに、天や龍はともかく、あの楽が冷静に受け流してくれるとも思えないし』
上目遣いで顔を持ち上げる私に龍之介は、あははと困り笑顔を浮かべた。
『多分、私はそっちの楽屋に顔出せないと思う』
「うん」
『ほんとに、ŹOOĻが何かとんでもない無礼なことしちゃったらごめんね』
「うん。ねぇ、エリ」
『Whaleのこけら落としの時レベルの事件は起こらないと思うけど。了が何か企んでる様子もないし…あとっ』
「エリ。大丈夫だよ。それよりさ」
なるべくの心算をしておいて欲しいと、口早に説明する私に、彼は優しげな笑顔を向ける。
「俺に、出来ることはある? 不安な君を、少しでも癒してあげる為に、今 俺に出来ること」
『え、今…?じゃあ』
私は龍之介の隣に、すすす…と移動する。
『ぎゅって、してくれる?』
「もちろん」
『大丈夫だよって、頭撫でて』
「うん。いいよ」
ゆっくりと、素直に体を預けた。龍之介はそんな私を、包み込んでくれる。そして、優しく髪を撫で付ける。上から下、上から下と、大きな手が往復した。
「大丈夫…大丈夫。明日は、きっと何事も無く収録を終えられるよ。俺達も、ŹOOĻの子達も、もちろんエリも。誰一人として、不幸な出来事なんかに見舞われたりしないから」
言わせておいてなんだが。
龍之介、それは…フラグなのでは、ないだろうか。
胸中が曇ったのに気付かないふりをしたくて、私はうっとりと瞳を閉じた。