第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
後日。滞りなくインタビューの仕切り直しが行われた。そして。それは男の謝罪から始まったのであった。
「亥清くん。この間はごめんね。前回の失態を取り返す為にも、今日は頑張るから」
「……べつに。まぁオレも、ちょっと言い過ぎたし」
悠は、何かが変わった。具体的に何が、と言い表すのは難しいが、なんだか少し丸くなったような気がする。
「ありがとう。君と、中崎さんに言われたこと、身に染みたよ。だからここ数日、君の記事を全部読ませてもらったんだ!」
「は?こいつに、何を言われたって?」
「あれ?聞いてないのかい?中崎さん、亥清くんと同じことを言っていたよ?インタビューするなら、その対象者の過去の記事ぐらい読んで来いって」
要らないことを、いちいち言わなくて良いのに。悠の驚いた瞳が、こちらを捉える。私はさりげなく顔を背けた。
「…なんだよ。オレにはそんなこと、全然言わなかったくせに。ただ適当に謝っただけだと思ってた」
「悠くん?」
「あぁもういいって!ほら、早く始めて。楽しい質問、期待してるぜ!」
「はは!了解!じゃあ、生まれ変わった僕からの、一発目の質問だ!
今度、ŹOOĻは大きな会場を押さえてライブをやる予定だよね!ズバリ、亥清くんの意気込みを聞かせてもらえるかな?」
悠は、数秒の間を取り思考する。そして、口を開いた。
「まぁ、適当に…、あぁ。いや待って。違う。
とりあえず、一生懸命ってやつ…やってみます」