第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
「中崎さん。お話し中のところ、割って入って申し訳ないのですが。そろそろ5時限目担当の先生がここへいらっしゃいますよ」
『まだ予鈴なのに?随分と教育熱心な先生がお勤めなようで。素晴らしい学校ですね』
「そのセンセーが変なだけなんだって。いっつも、本鈴の2.3分前には教室来んの」
そんな話をしていた、ちょうどその時。廊下に面した磨りガラスに、人影が映る。春人はその影を確認してもなお、余裕の表情だ。
『事情を知らない先生が、私と鉢合わせしては よろしくないですね。きっと驚かせてしまいます。
ですから、私はこちらから失礼するとしましょう』
なんと春人は、教室の窓枠に脚を掛けたのだ。突然の奇行に、教室内の生徒は全員ぎょっとする。
『では悠。また後で』
「っ!?バッ、ここ2階っ」
腕を伸ばすも、その手は虚しく空を切った。まるで籠の中の鳥が、軽やかに空へ羽ばたくみたいに。奴は行ってしまった。
慌てて窓から身を乗り出し、階下を覗き込む。オレだけじゃなく、一織と環。さきほど春人に群がっていた生徒達、全員が。
オレ達の心配をよそに、春人は見上げ、笑顔で手を振っていた。
「す、すっげーー…超かっけーから俺もやる」
「四葉さん。ぜっっったいにやめてください」
「……は、ははッ!なんだあいつ!やることなすこと滅茶苦茶じゃん!ヤバ過ぎ派手過ぎ!あははっ!面白い奴!」
腹を抱えて笑っていると、一織と環もつられるように笑顔を浮かべた。
間も無く先生が教室に現れる。そして、窓際に張り付く生徒全員を前に、不思議そうに首を傾げる。
窓の外に、一体なにがあるのだ。と。
「……」
(中崎 春人。オレ達の、マネージャーだ)
オレは心の中で呟いた。
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