第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
しかしながら、春人が怒っていないのだと知って ほっとしたのも事実。
今なら、少しは素直になれるような気がした。自分のことを知って欲しい。春人のことを理解したい。なんて、大層なことは言わないが。少しだけなら、話をしても良いと思える。
「やっぱり、あんたのことが理解出来ない。オレと同じで、九条の奴に…み、見限られたくせに。なんで、笑っていられるんだ?怒らずにいられるんだ?
全部、忘れたみたいにさ。へらへら笑っていられるのって、弱い奴みたいだろ」
『なるほど。そういう思いから、貴方は先日、私に怒っていたのですね。話してくれて、ありがとうございます』
「なんだよ。答えになってないじゃん」
春人はきっと、いま真剣に言葉を選んでいる。オレとの会話の為に、頭を悩ませてくれている。
しかし、次に口を開いたのは春人ではなく環だった。
「なぁ、いすみん。なんで昔にあった嫌なこと 笑って言ったら、弱いってことになんの?」
「え?だって…あいつは、オレ達を簡単にポイって使い捨てしやがったんだぜ?そんなの普通、ずっとムカつくだろ。簡単に許せるはず、ない。オレには、絶対に出来ない。全部忘れて、笑って昔話みたいにするなんて」
「口を挟んで申し訳ないですが。今のお話を聞かせてもらった、客観的な意見を述べさせてもらっても良いですか?」
オレが頷くと、一織は真剣な面持ちで言葉を並べ始める。
「おそらく中崎さんは、九条を許したわけでも、受けた仕打ちを忘れたわけでもありませんよ。
ただ、もうとっくに 乗り越えてしまっているのではないでしょうか」