第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
教室のそこかしこから、何故か拍手が沸き起こる。いや、教室だけでなく廊下からもそれは聞こえてきた。
「な、なんですか?この無理矢理ハッピーエンドにしたような空気は」
「うぅ…よかった。よかったなぁ、いすみん…。でもそろそろ離れた方がいいかも。俺が暴れ出しちゃう前に」
「オ、オレだって早く離れたい、けど!くっ…、こいつ、何でこんな力強いわけ!?」
微笑ましい目をこちらに向けてくる人間全部に、叫び散らして強引に解散させる。
教室がいつもの姿を取り戻してから、オレは春人に人差し指を突き出して怒声を飛ばす。
「変なことすんなよ!!明日からオレ、どんな顔して学校に来ればいいか分からないだろ…!女みたいにベタベタしやがって!」
『ハグに女も男もないでしょうに』
「せっかくイイ感じだったのに。なぁ、いすみん。もうこの流れで謝っちまえば?」
「!!」
『謝る?』
素直に環の指示通りに動くのは癪だが、おそらくここで謝罪をしないと、もう機会は現れないだろう。
大きく息を飲み込む。そして、春人と正面から向き合った。
「…こ、こないだは…ごめん」
『こないだ?』
「ほら…オレ、あんたに…ブ…ブス って。言っ」
「中崎さんはブスではないでしょう。どちらかと言うと、整ったお顔立ちをされていると思いますよ」
「わ、分かってんだよ んなこと!!」
「おぉ。いすみんのキャラが壊れてく…」
あのー と言って、春人がおずおずと小さく手を上げる。
『私、そもそも怒ってませんけど』
「は!?だ、だって、あの後しばらくの間しかめ面だったじゃん!オレのこと置いて行く勢いで歩くのも早かったし!」
『……あぁ!それは…
トイレ、我慢してたんです』
「……え?」
『久しぶりに生九条を見て、緊張がピークに達したんでしょうね。尋常ではない尿意が私を襲ったんですよ』
と、いうことは、何か?
オレは、怒ってもないこいつの機嫌を取るために、悩んで苦労して、環達まで巻き込んだっていうのか。
ありえない…なんという茶番だ。