第12章 会いたい。死ぬほど
『こんばんはー!はじめまして、Lio です』
Lio…。Lio。俺は、初めて知ったその名前を何度も胸の奥に刻み付けた。
Lioは 相変わらず、俺好みの声だった。この声だけは、出会った時と何一つ変わっていない。少しだけ安心した。
『私の歌を聴きに来てくれて、ありがとう。
楽しんで歌うので、頑張って聴いて下さい』
会場は 笑いに包まれた。明らかに、“ 楽しんで ” と、“ 頑張って ” が逆だったから。
「っはは。あいつ、緊張してんのか?」
笑いを我慢出来なかった俺に対して、天は真顔で 真っ直ぐステージを見つめていた。
「…ボクは、わざと言ったと思うけどね」
「だとしたら、凄いね。会場の空気を、一気に自分のものにした」
龍之介も、ステージを真剣に見上げている。俺も、2人に負けないくらい集中してLioを見つめる。
『…… “ Dramatic ” 』
静かに曲名を呟いたと思えば、間髪入れずに 歌が始まる。
ずっと、彼女の声をまた聴きたいと願い続けた。まさか、こんなかたちで それが叶うなんて。
しかも、歌 という 俺にとっても特別なものに姿を変えて、実現しようとしている。
もしかしたら、これが…運命ってやつなんじゃないのか。そんなことさえ考えついてしまう自分が ここにいた。