第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
『私は中崎春人と申します。
この度TRIGGERのプロデュースを全任されました。以後お見知り置きを』
楽にした挨拶と同じものを、彼にも繰り返した。
「……ふぅん。面白くない冗談だね」
『………』
よくよく考えれば、社長も姉鷺も 私について何故何も説明していない!?せめてTRIGGERの3人には、話をしていてもおかしくないはずだ!
普通は事がスムーズに運ぶように、予め何かしらの説明をするのが筋というものだろう。
「……はっ!」
天は、急に何かに気付いたような表情になった。
「わ、わぁ!ボク凄く驚きました…!急な事で、心臓が止まるかと思いましたよ」
そう言って、辺りをキョロキョロ見回している。天は何かを探しているようだ。
『…あの、これドッキリじゃないんで。だから周りをいくら探してもカメラなんてありません』
「……そうなの?」
どうやら図星だったらしい。とっさにアイドルスイッチがオンになったから、おかしいと思ったのだ。
「なら、これは本当に何の冗談?」
『冗談ではありません』
「TRIGGERを全任されたって?キミが?…ありえない」
ここで話していても、ラチが明かない。
『…ありえないかどうかは、社長に直接確認すれば分かりますよ』
「……そうさせてもらうよ。社長に、怪しい人間が社内をウロついてるって 報告させてもらうから」
そう言って、天は廊下の先に消えて行った。
『……さっきまでは天使だったのになぁ…』はぁ
先ほどは、彼の背に天使の羽さえ見えていたというのに。
いま見えるのは、3股に尖った悪魔の尻尾。