第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
『あー…情け無い滑り出しになってしまった』
名刺が無ければ、格好が付かないではないか。
私を不審者として見る楽の、あの訝しげな目線が頭にこびりついて離れない。
とりあえず姉鷺を探し出して、名刺を受け取るとしよう。
私はキョロキョロしながら廊下を進む。
「あの、もしかしてどちらかお探しですか?」
優しい透き通った声。私に親切な声をかけてくれた人物…。
それは、TRIGGERのセンター。九条天。
うっわ、カッコいい可愛い、近くで見ても毛穴が無い、美しい目綺麗。
「……??ボクで良ければ、ご案内しますよ」
固まる私に、小首を傾げる天。
あぁ、この世にもしも天使が降臨したとすれば、彼のような姿をしているに違いない。
『あ、私は外来ではありません。
申し遅れました。本日付で八乙女事務所でお世話になります。中崎春人と申します』
「………は?なんだ、ウチの人間なの?」
『……??』
(んん?なんだか急に、天使様のお顔とお声が…)
「入館許可証も首から下げてないし そうなのかなとは思ったけど。
じゃあボクはこれで」
自分の言いたい事だけを残して、さっさとこの場を去ろうとする天。
自社の人間ならば、自分の手を煩わしてまで案内をしてやる必要はない。そういう事だろうか。
はっはーん…。どうやら彼は、そういうタイプの人間らしい。
『…待って下さい九条さん。
もう一度、きちんと挨拶をさせて頂いても?』
「………」
彼はくるりと身を翻し、面倒そうな顔を隠しもしない。しかし、挨拶だけは聞いてくれる姿勢を示している。