第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
すっかり空になった弁当箱の蓋を閉める。他の3人も、それぞれの食事を終えた頃合いだ。オレはタイミングを見計らって、なるべく自然に告げる。
「ごちそう、様…。ま、まぁまぁ美味かっ」
「あのぅ…少しいいですか?」
どうしてよりにもよって、このタイミングで邪魔が入るのか。傍に立っているのは、クラスの女生徒が数名。
生徒でもなければ教師でもない、見ず知らずの男が教室で食事をしているのだ。ずっと悪目立ちはしていたのだが、よくもまぁ声を掛けようと思ったものである。
『私、ですか?』
「は、はい!」
『あぁ…皆様の教室に突然お邪魔して、驚かせてしまいましたよね。すぐに お暇いたしますので、目を瞑っていただけますか?可愛らしいお嬢さん達』
胸に手を当てて、しっとりとお辞儀をする。すると、女生徒達はうっとりと頬を上気させ 熱い息を吐いた。
「その、無駄に人を誘惑するのはあなたの癖なのですか?」
「ナギっち みてぇ…」
一織と環の声に、はっと正気を取り戻す女達。あわあわと首を振って要件を語り始める。
「そうじゃないんですっ!あ、あの…TRIGGERのプロデューサーの、中崎さんですか!?」
『私のことをご存知なのですか?ふふ、光栄ですね。ですが今の私は』
「やっぱり!!あの!私、前に貴方が取り上げられてる雑誌を読んで!TRIGGERも大好きなんですけど、中崎さんのことも、す、好きです!!」
「私も!良かったら、握手…握手してください!」
いつの間にか人が人を呼び、他クラスの女子まで群がる始末。一織は、ただ黙って見ているだけ。環は、さすが中崎さん!と、訳の分からないことを言っている。
オレは…。ただ、不愉快だった。