第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
「は??なんで?えりりん、じゃなかった。中崎さんのことブスとか言ったん?ぜっってーブスじゃないじゃん」
「わ、分かってるよ!そんなこと…だから言わなきゃ良かったって思ってんだろ!?」
一通りの説明の後、環は食べカスで汚れた指をペロっと舐めながら首を傾げる。
「んー、でも中崎さん、そんくらいじゃ怒んねぇと思うけどな」
「いや。あれは、怒ってた…。しばらく無言で、歩くのとかめちゃくちゃ早かったし。とにかく、なんか圧が凄かった」
「ふーん?じゃあさ、さっさとごめんって言えば?」
「それが言えたら、苦労してねぇんだよ馬鹿!」
環のような素直な奴に、きっとオレの気持ちなど分からない。いつも強気に出ている相手に、自分から頭を下げるなんて。照れ臭くて、なんだか負けた気分になって、たったの3文字が口から出てこないのだ。
「いすみん、めんどくせぇのな」
「あ、諦めるなよ!助けようとしたんなら、最後まで頑張れよ!」
「お、おぅ…
じゃあ、なんか中崎さんが喜びそうなことしたら?そしたら、許してくれっかも」
環の提案を受け、一応は本気で考えてみる。オレに出来ることで、奴が喜びそうなこと…
意外にも、容易く思い至った。まだ記憶に新しい、奴が言った言葉。
「そういえば あいつ…オレのこと、知りたいって言ってた」
「……」
「なんか、ちょっと恥ずかしいけど。多分、本気でオレのこと知りたいって言ってたんだと思う」
「はぁ…。なぁ、いすみん。それって、俺に対する自慢?」
「は?な、なんでそうなるんだ?」
環は、眉根を寄せて歯を食いしばり、心の底から羨ましそうだった。