第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
「えっと…失礼だが、君は?
いや、待って。どこかで、会ったことがある気が」
『初対面です。私と貴方は初対面に違いありません』
「??そう…」
『とにかく、き、聞き捨てなりませんでした。訂正しろとは、言いません。それは、彼がこれから証明することですから。
だから、見ていてください。彼はこれから、頂上に向かっていきますよ。では失礼します!』
私は宣言しながらも、悠の手を掴んで後退りを始めていた。そんな私を、九条は首を傾げて眺めている。
曲がり角を幾度も越えて、扉をいくつも潜る。やがて高ぶった気分も落ち着き、九条の気配も完全に消えた。
「っ、おい!いい加減に腕はなせよ!」
『あぁ、すみません』
悠は、掴まれていた方の腕を大きく振り上げる。そして、様子を窺うようにこちらを見上げた。
「初対面って、あれ嘘だろ。お前、九条とどういう知り合いだ」
『…まさか、亥清さんが私に興味を!』
「ばっ、馬鹿じゃねぇの!?
九条は、オレが世界で一二を争うぐらい嫌いな奴なんだよ!そんな男とアンタが、どんな関係なのか気になっただけだ!」
『私はあの男が世界で一番苦手です』キリ
「どこに対抗してんだよ!いいから早く話せ!」
私も、彼と九条の関係は気になるところだ。それを聞かせてもらえるのならば、代わりに私の話をすることもやぶさかではない。
しかしそれは、こんな場所で済ませられる軽い話題じゃない。
そこで私達は、場所を変えることにした。