第12章 会いたい。死ぬほど
俺が Longhi's に到着すると、店の前にはすでに天が立っていた。
「悪い。待たせたな」
「本当だよ。急に呼び出しておいて待たせるなんて。中で待とうにも、ボク1人じゃ入れないんだよ」
そう。天はバリバリの未成年。1人ではバーに入る事が出来ない。
そして、本来ならこいつも海外にいるはずなのだが。今は大学が夏休み中の為、都合良く日本にいたのだ。
「ごめん、2人とも!待った?」
そのうちに龍之介も合流した。
中は、人でごった返していた。本当にこんな こじんまりしたバーの地下にライブハウスがあるのだろうかと疑ってしまう。
とにかく、俺はチケットを手に入れる為 天と龍之介を壁際で待たせて、バーカウンターの中のマスターに声をかける。
「すみません。今日、ここの地下でライブがあるって聞いたんですが。チケットありますか。俺は八乙女楽といいます。
MAKA…、あ えっと、真賀田四季からここでチケットを譲ってもらえと」
一通りを手短に説明すると、すぐに話は通じたようで。マスターは胸ポケットから3枚のチケットを取り出した。
「はじめまして八乙女様。お話は真賀田様から伺っております。
こちらを、地下のチケットカウンターの者にお渡し下さい。
もうすぐに開場のお時間です。どうぞ、楽しい時を過ごして頂けますように」
にっこりと柔らかい笑顔を浮かべた初老の男。俺は礼を言うと、また人混みを掻き分けて2人の元に戻る。
そして、言われた通りに地下へ続く階段へと向かうのだった。