第12章 会いたい。死ぬほど
《半年前、私のラストステージの時に 楽屋で会った女の子覚えてる?》
覚えているもの何も、未だに頭の中にこびりついてんだよ。とは、別にMAKAには言わなかった。
口が裂けても言えるわけない。現在進行形で、その名前も知らない女に囚われているなんて。
だから出来るだけ自然に、しれっと答えた。
「…あぁ。たしか、お前のバックダンサーやってた奴だろ」
《そうそう!今日ね、その子の初ステージなの》
そうか。考えてみれば、人気ダンサーであるMAKAのバックで踊っていたのだ。あいつも それなりに有名なダンサーになったとしても不思議ではない。
「へぇ。今日が記念すべきデビュー日なわけだ」
《まぁデビューって言っても、インディーズだけどね。でもきっとすぐに事務所も決まって有名になるわよ〜?
今日も本当は私が行きたかったんだけど…どうしても仕事で行けなくて。
あー、見届けたかったなぁ…あの子のアイドルデビューの瞬間を…》
「は!?」
今、こいつはなんと言った?アイドル?ダンサーでは無くて?
ということは…踊るだけではなく、歌うのか?あいつが?
また…あの声が聞ける!
「どこだ?場所は」
《お?いきなり乗り気?ありがとう!私の代わりに見てあげてね。
場所は…BAR Longhi's の地下ステージ。チケットは、マスターに言えば大丈夫。私が友達と行く予定だった3枚分は確保してもらってるから!
出来れば アイドル目指してるお仲間と一緒に、観覧して来てね》
電話を切ったら、すぐさま今度は自分から電話をかける。
さきほど別れたばかりの、天と龍。都合よく2人ともに連絡がついた。
急な呼び出しに驚いてはいたが、なんとか現地まで出て来てくれるよう話をつける。