第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
この上なく、楽しくて愉快な気持ち。でもそれとは裏腹に、瞼は言うことを聞いてくれない。意に反し、とろとろと下へ行きたがる。それになんだか、3人の声も次第に遠くなっていく。
「ありゃりゃ、エリちゃんこれは本格的に終了のお知らせかもね。でもご安心あれ!紳士の中の紳士なオレが、お家まで送ってってあげる!」
「こらこら百くん。そういうのは、彼氏のお役目でしょ?千、お前もこっそりエリのこと持ち上げようとするな」
「なんだ、バレたか…」
「て、っていうかバンさん!?彼氏って!?エリちゃんの彼氏って…
はっ!!まさか、バンさん達、より戻しちゃったんじゃ!?」
「はは。違う違う」
「そ、そうですか…」ほっ
「ねぇ?今のどういう意味?よりって何」
身体全体がふわふわして、心地良い。まるで、ぬるめの温泉にでも浸かっているような気分。
それにしても、やっぱり百はいつも元気だ。私がこんな状態にあっても、彼の大きな声はよく通る。千とまた漫才でもしているのだろうか…言葉と言葉を繋ぎ合わせるのが億劫なので、BGMのように彼らの会話を聞き流す。
「どうも、こんばんは」
「えっ、あれ!?龍ちゃん!?どうしてここに」
「ごめんね、こんな時間に呼び出しちゃって」
「いえ、とんでもないです!こちらこそ、彼女がご迷惑を掛けてしまったみたいで…」
「あはは、いや平気だよ」
私は、夢を見ているのだろうか。龍之介と万理が、仲良く談笑する声が聞こえる。
「彼女がご迷惑を、か。ふふ、龍之介くん。その言い方、なんだか彼女が君の恋人みたいじゃない?」
「え……あぁ、はは」
「もうユキのお茶目さん!そんな冗談言っちゃって、ほら龍が困って…
あ、あれ?そういえばオレ、まだ否定の言葉を聞いてないなー。なんて…」
「えっ、あぁその、何と言いますか…一応、お付き合いをして、ます…」
ほわほわしていた意識が、百と千の絶叫にて覚醒する。ビクっと体を揺らして、冷静に辺りを見渡せば、そこにはやっぱり龍之介の姿があった。