第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
『これ以上ない、正解だよ。百はさすがだね』
「本当?ふぅ、良かった。ちょっと ほっとしたかも。全く見当違いなこと言っちゃってたら、どうしようかと思ったからさ」
私は、なんて身勝手なのだろう。努力をするか しないかなんて、彼らの自由だというのに。才能があるのだから、努力し 上へ行くことは義務だ。とでも考えているのだろうか。
私も手伝うから。貴方達なら出来る。
そんな言葉をいくら添えたとしても、彼らに響くとは思えない。私のこの気持ちはきっと、迷惑でしかないだろう。
「エリちゃん。大丈夫だよ」
『え?』
「あの子達は、きっと上がって来るから。エリちゃんが、たとえ何もしなくたって。間違いなく、オレ達と同じ場所に来るよ」
百の表情は、自信に満ち溢れている。まるで、数ヶ月後の未来をその目で見て来たかのようだ。ニコっと八重歯を覗かせて、彼は続ける。
「オレは、4人のステージを客席から観てたから分かる。大丈夫だよ。あの子達は、ちゃんと歌が好きだ。ダンスが好きだ。じゃなきゃ、あれだけ沢山の人達の心 掴めないよ」
どうやら、彼らの中に光を見出したのは、私だけではなかったようだ。百もまた、ŹOOĻというアイドルが本物だと感じている。
「それに…ŹOOĻの方も、見ちゃったからね」
『ŹOOĻが、見た?』
「うん。ステージ上から、客席を。あれを見ちゃったら、もう…ね。どんな人間も、絶対に虜になっちゃうんだ。星の海みたいなサイリウム。一生懸命に、自分達の名前を呼ぶ声。瞬きも忘れて、こっちを見つめるキラキラの瞳。
あんな景色、あそこにしかないから。だから、きっとŹOOĻの方からステージを求める。その為には、どんな努力もするはずだよ」
『…百』
「にゃは!だから、そんな不安そうな顔しなくても大丈夫!
って…無責任に、言い過ぎちゃったかな?」
『ううん。そんなことない。
ありがとう百。私はずっと、その言葉が聞きたかったんだ』