第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
『千は努力の人だもんね。だから、才能があるのに努力しない人に対して怒りが湧いちゃうのかな』
「君だってそうだろ。エリちゃんのそういう姿勢に、実は親近感を持ってるんだけど」
『…私は』
「確かにエリは努力家だよな。俺がギターを教えていた時も熱心に練習して、ぐんぐん上手くなったもん」
「は?万が、彼女にギターを教えたのか?」
随分と懐かしい話を持ち出したものである。それは、私にとっては淡い青春の記憶。目を閉じれば、万理と共に弦を弾いていたシーンがいくらでも蘇る。
『ふふ。今でも結構弾けるんだよ?ピアノほどじゃないけど』
「俺はもうほとんど触ってないから、腕が鈍ってるだろうな」
「……僕は…楽くんに、ギター教えたことある」
「なんでそこで対抗するんだよ」
「えっ!?楽にギター教えたのってユキなの!?オレ、楽にギター教えてもらったことあるんだけど!何この逆輸入!面白いね」
百が、笑いながらノリノリのエアギターを披露する。そんなおちゃらけた姿に、私達は揃って腹を抱え笑うのだった。
それから またしばらく談笑していると、百がトイレへ行く為に席を外すと手を上げた。ちょうど私も、同じ理由で席を立とうとしていたので便乗させてもらう。
万理と千を席に残し、私と百は御手洗いへと向かう。廊下を歩いていると、百が急に女の子のように高い声で話を振って来た。
「うふっ!ねぇねぇ、今日の男達、イイ感じじゃな〜い?エリちゃんはどっち狙ってる?アタシ、どっちも超タイプで迷っちゃってるんだけどぉ」
『あっはは!合コンか!』
「イイね!さすがエリちゃん!ナイスツッコミ!」
もつれる足を引きずって、2人は笑い転げるようにして目的地を目指した。