第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
『っていうか、そのŹOOĻなんだよね。いま問題なのは…。思い出したら、また腹立ってきた。ちょっと愚痴っちゃってもいい?』
「エリちゃんの愚痴なんて、超レアだね!」
「そうね。酒の力って偉大」
「やたら荒れてると思ったら、原因は彼らだったか」
千の言う通り、酔ってる影響もあってか普段よりも口が軽い気がする。
私は、あの4人がろくにレッスンを受けないこと。口パクで挑んだ撮影。そして、車内で交わした言葉の数々を彼らに打ち明けた。
「そんなこと、何も悩む必要ないじゃない」
「わぁお!こんなにもサラっと解決策見つけちゃうなんて、さっすがユキ!」
「さっさと見限っちゃえよ」
「ユキィ!?」
顔は相変わらず、はっとするほど綺麗なのに。その頭からは2本のツノが見えるようだ。
「ろくに努力もせず、簡単に天下が獲れるなんて思ってる甘い連中が、僕は1番嫌いだ。エリが面倒を見る必要なんてないでしょ。相応に、痛い目を見ればいいんだ」
「辛辣だね…。まぁ、言いたいことはオレも分かるけどさ」
全くの正論に、私も乾いた笑いしか出てこない。まだ何の反応を見せていない万理に、顔を向けてみた。すると グラスを傾けていた彼と目が合って、やがてゆっくりと思考を語り始める。
「でも、エリは見限るべきじゃないと思ったから悩んでるんだろ?」
『うーん。まぁ』
「万。お前、あんな奴らの肩を持つつもりか?」
「ユキ…いくらなんでも、あんな奴らって言い方はどうかなぁ?なんて、モモちゃんは思ったり…」
「へぇ。モモも、万と同じ意見なんだ?」
「こら千。百くんを困らせるようなこと言うなよ。百くんはただ、よく知らない子達のことを、あんな奴ら。なんて言い方はしない方がいいって言いたいだけだろ。
な、百くん」
「どうなのモモ」
「どうなのかな?百くん」
「こ…っ、殺してください!!もういっそのこと殺してくださいー!」
なるほど。推し2人の間で板挟みになった信者は、こうなってしまうのか。
私は巻き込まれぬよう言葉は挟まず、その様子を静かに観察していた。