第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
『百と千だって、自分達だけじゃなくて、大好きなもの全部まるっと守りたい。そう思ったから、岡崎を出たんでしょう?
私も、同じようにしただけ。Re:valeは、1番大切な “ 歌 ” は捨てなかった。犠牲にしなかった。
私も、同じ。TRIGGERを、諦めたりしない。今は少し離れちゃってるけど、いつか絶対に3人の元に帰るよ。その為なら、どんな試練だって乗り越えてみせる。半分くらいなら、死んだっていい』
「…ほら、千。いい加減に座ったら?食事中に席を立つなんて、行儀悪いぞ?」
「……はぁ。分かってる」
「とっくに、エリちゃんは覚悟決めてたんだね。あはは!オレ達と同じだ!」
百は、困ったような顔で笑い飛ばした。千は促されるまま、しぶしぶ腰を下ろす。
「君と話していると時折、自分がひどく子供のように感じるよ。ふふ、どうしてだろうね」
「そりゃ、お前が子供だからだろ」
「うるさいな。少しは大人になった気でいるんだから、そういうこと言うなよ」
拗ねてしまった千を見つめる万理は、私の宣言については言葉を発さなかった。おそらく、何を言ったところで私が折れないことを知っているからだろう。
「…エリちゃん」
『なに、千』
「僕も、君のそういうところが 好きだよ。その真っ直ぐな目を見てると、どうしようもなく信じたくなるんだ。
エリちゃんなら、そんな夢物語を、現実のものにしてみせるんじゃないかって」
夢物語。
私の掲げるものは、側から見ればそうなのかもしれない。
TRIGGERだけでなく、大切な他のアイドルも守り、さらにはŹOOĻのことも押し上げたい。それから、芸能界において了の力を無効化し、そして私の再デビューも取り止めにしてもらう。
改めて考えると、たしかに夢のような話である。
「なんか複雑な気分だな。自分の元相方が、元カノに告白してるシーンを見せつけられるのって」
「え?万、今なんて言っ」
「わーーー!ほら乾杯!!もっかい乾杯しよ!!オレ達のライブと、エリちゃんの新たな船出に!!」
「ちょ、モモ、声でかいな…」