第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
「なんにせよ、気をつけろよ?男が顔に傷を作るのと、意味が全く変わってくるんだから」
『ありがとう。でも平気平気!目立つ場所じゃないし』
「で、原因は?」
『…え?』
万理は にこにこ笑顔だったが、私は危険を察知した。
私に対して過保護気味な彼が、怒らないはずがないのだ。本職の男と本気のバトルをして、案の定 怪我をしてしまったなどと知られれば。
打ち明けるわけにはいかない。もしバレてしまえば、長い長いお説教は必至…!
『だ、大丈夫だって。怪我だって、大した事なかったんだし』
「いや、割と傷 深かったよ。モモの部屋も、血みどろになったしね」
『千!』空気読んで!
「百くんの部屋で怪我したのか!?」
「っ、バンさん!ごめんなさい!!オレが悪いんです!エリちゃんを怒らないであげて!代わりに、オレのこと殴っていいですから!」
「ちょ、百くんは少し落ちついて。俺が君を殴るわけないでしょ」
「いえ!そういうわけにはいきません!元はと言えば、オレがエリちゃんをヤクザから守り切れなかったのが原因なんですから!!」
「ヤクザ!?」
終わった…。もうこうなったら、飲むしかない。
私は手酌で、グラスの中へ並々と酒を注いだ。しかし、そんなふうに現実を逃避したとて、万理からは逃れられない。
「エリ…?どういうことだ?説明してもらおうか?」
『…ま、まぁまぁ。ほら、たまにはあるでしょ。友達の部屋でちょっとハシャギ過ぎて、バーカウンターの角で頭カチ割ることくらい』
「あってたまるか そんなこと!!」
滅多に声を荒げることのない万理が、これでもかと私に叫んだ。