第95章 《閑話》とあるトップアイドルの息抜き?
まぁ飲めよ。そう言って、万理はようやくボトルを手に持った。意気揚々とグラスでそれを迎えに行くと、とくとくと注がれたのは透明な液体。ってきり、赤ワインのお代わりを注いでくれるものと思っていたのだが。
『何これ』
「水」
眉をひそめる私に、万理は笑顔で言い放つ。
「いくらなんでも飛ばし過ぎだ。そんな飲み方したら、お前の肝臓が可哀想だろ」
『大丈夫だって!私の肝臓は 体の中で1番大きな臓器で、なんと体重の50分の1もあるんだから』
「人類皆そうなんだよ」
ぶーぶーと文句を言ってみるが、万理は首を横に振るばかりだった。
飲みたい私と、止めたい万理。堂々巡りの問答を続けていると、私側に付いてくれそうな人間が、2人現れる。
「すみませんバンさん!遅くなりました!エリちゃんも、ごめんね」
「大丈夫。忙しいだろうに、来てくれてありがとう」
『そうそう。お仕事お疲れ様』
中身が詰まった重たそうな鞄を、ドサリと置く百。そして、千の方は早くも空になったフルボトルを見てから告げる。
「新記録」
「何が?」
「減ってるお酒の量だよ。遅くなるから先にやってて。そう言ったのは確かにこっちだけど、ここまで盛大に先にやられたの初めて」
「ユキ!遅くなったのはオレ達の方なんだから、そんな言い方したらダメだよ!」
百は、よほど万理のことを崇拝しているのだろう。千の言い草に、あわあわと両手を忙しなく動かして言った。
対する万理は、私のことを横目で見やって告げる。
「言っとくけど、飲んだのはほとんどエリだからな」