第94章 ほら、解決だろ
メロディステーションは、通常であれば生放送。しかし、ŹOOĻが出演する週の放送は特別版。様々な歌手が、あらかじめ収録したものを繋ぎ合わせて放送する。
正直な話、ありがたい。暴れん坊の彼らと生番に挑むなど、考えただけで胃が痛む。
リハーサルは、既に滞りなく終えている。後は、リハでやった事を擬(なぞら)えるだけ。それくらいなら、どうあがいてもトラブルなど起こり得ない。
という考えは、どうやら甘かったらしい。
「申し訳ありません!!実は、機材の方にトラブルがありまして…。スタンバイしていただいたのに恐縮なのですが…もうしばらく、楽屋の方で待機を願えますでしょうか」
「は?オレ達は、衣装も着て準備も終わってるんだけど。そっちが約束の時間を守らないわけ?」
「す、すみません!!今、懸命に原因を探っているのですが…」
『亥清さん、少し黙って。誰もトラブルを起こしたくて起こしているわけじゃないんです。もう少し大人の対応を心掛けてください』
「…ウザい。オレに命令するなよ。ただのマネージャーのくせに」
ここで悠と私がやり合っても、何の解決にもならない。さて、彼らをどう説得して楽屋へと戻そうか。具体案を探し始めた私の隣で、虎於が口を開いた。
「俺にはこの後、予定があるんだ。だから待たされるのは困る。具体的には、一体どんなトラブルなんだ?」
「実は…マイクをアンプに繋ぐと、ノイズが入ってしまうんです。さっきの撮りでは、一切 問題はなかったのですが…」
「なるほど。問題があるのはマイクで、音楽は流せるのか?」
「はい、そちらは問題ありません」
「そうか…なら、解決だな」