第94章 ほら、解決だろ
悠とトウマは、熱心にこちらを見つめている。その視線には、心なしか期待が込められているような気がする。もしかすると、巳波の言葉を否定して欲しいのかもしれない。
対する虎於と巳波は、明らかに楽しんでいた。私がどんな対応をするのか、ニヤついた顔で待っている。
こんな空気の中で、いや!私は本気で貴方達の為に動いているし働くつもりだ!などと主張するのは、なんだかダサい。だったらいっそのこと…
「お、おい。何とか言ってみろって、なあ」
「自分の気持ちだろ!迷ってるってことは、やっぱり…ただフリ、してだけなのか?」
トウマと、そして悠が せっついて来る。
『ふふ、バレてしまっては仕方がないですねぇ。そうですよ?棗さんが仰った通り、私は貴方達のことを本気で推していく振りをしていたんです。
いけませんね、こんな悪い大人に簡単に騙されては。もっと、人を疑うことを覚えましょうね。亥清さん』
「〜〜っ!!ト、トウマ!こいつ!やっぱ悪い奴だ!!悪党だ!」
「お、俺は最初から、疑ってかかってたぜ!ハルは、簡単に人を信じ過ぎなんだよ!はは…」
『いや、狗丸さんも結構 危なかったでしょう。隠せてませんよ。無垢オーラが』
「なに言ってやがる!俺は全く無垢なんかじゃねえ!真っ黒だ、真っ黒!こ、心の中とか!!」
汗汗と、必死に弁明するトウマ。私が悪党だと信じ込み、衝撃を隠しきれていない悠。2人とも、何と可愛げがあるのだろう。
TRIGGERには、こんなにも揶揄いがいのある人材はいなかった。私は密かに、2人の反応を楽しんで悦に入るのだった。
「…おい、巳波。あいつ、何故 自分を悪者にして楽しんでるんだ?分が悪くなる嘘を吐くメリット、何かあるのか?」
「知りませんよ。私、常人なので。変態の考えることなんて、全く理解出来ません」