• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第94章 ほら、解決だろ




この手の話は、もう耳にタコが出来るくらい聞いた。誰も彼もが、ŹOOĻといる私を見ると、口を揃えてそう告げるのだ。
しかし。曖昧な笑顔を浮かべているだけで話は勝手に完結することも知っている。


「でもまぁ、ツクモさんと八乙女さんは事務所同士の繋がりが強いから。鞍替えしたって言うより、ただの異動に近いのかな?
ほら、八乙女プロがツクモから独立した後も、何かと支援を受けてたって聞くし。そう考えれば、むしろ君は栄転ってことになるんじゃない?」

『はは。そうかもしれませんね』


人は、自分の都合の良いように物事を解釈する生き物なのだ。

もうこれ以上、自分達の住む場所をツクモに引っ掻き回されることはない。そういう希望的観測が、平和的な思考を働かせる。


「この間のWhaleでのジャックライブも、TRIGGERが後輩にあたるŹOOĻのデビューを手助けしてやったんだって、専(もっぱ)らの噂だよ!いやぁ、八乙女さんも粋な事す —— 」


私は顔に笑みを貼り付けて、聞きたくない言葉をシャットアウトする。

まだ、了の用意した脅威はすぐ近くに潜んでいるのに。それに気付かないふりをし、見たくないものは見ないで楽観的思考に浸る彼ら。べつにそれ自体を悪いとは思わないが、賛同は出来かねる。

考え過ぎくらい考えていても、了という男はこちらの寝首を掻いてくるのだから。


「 —— って、感じで。ŹOOĻの人気が、この調子で上ってくれると僕達もありがたいよ!ねぇ、春人くん」

『…えぇ。そうですね。ご期待に添えますよう私も新天地で益々 奮励して参りますので、今後もŹOOĻを どうぞご贔屓に』

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp