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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第94章 ほら、解決だろ




振り付け師は、唇を噛む私を見ると、もうそれ以上は何も言わなかった。
1人になった、レッスン室。部屋の中央で胡座を組み考える。

何も私は、了からŹOOĻをプロデュースしろと命令されたわけではない。最高のアイドルにしろと、言われてもいない。今のところは、ただの付き人に過ぎないのだ。
しかし一緒に仕事をするならば、彼らを輝かせてやりたい。TRIGGERやIDOLiSH7、Re:valeと肩を並べる場所まで羽ばたいて欲しい。その手伝いがしたい。そう、思っていた。

しかし、大きな誤算があったようだ。


『あの4人は…べつに天下なんて獲りたくないのか。じゃあ彼らは…ŹOOĻを、一体どうしていきたいんだろう』


本気で願い、血の滲む努力をしたとしても、夢には手が届かない人間の方が多い世界だ。本人達がその調子では、人々に望まれるアイドルになんてなれるわけがない。


『私の目が、曇ってたのかな。あのステージを観た時は、4人の中に眩しい輝きが秘められているような気がしたのに。
私は、これから…どうしたら良いんだろう』


1人語り掛けた、長い自問。当然、その問いに答えられるのは自分自身のみである。
返って来るのは沈黙のみ。の、はずだったが。ガチャリ、と扉が開かれる音がした。

ようやく虎於が到着したのか。反射的に、扉の方へ睨みを利かせてしまう。


「わーぉ!怖い顔だね!どうしたの!?どうでもいいけど!」

『…了さん』

「感動の対面はどうだった?罵り合った!?殴り合った!?来るのが遅過ぎたかぁ。面白いものを見逃しちゃった!」


やはり、そういう期待をして私と振り付け師をここで引き合わせたのか。分かってはいたことだが、相変わらず性格の捻れ曲がった男である。


『残念ながら、貴方が楽しめるようなイベントは起こらなかったですよ』

「そうなの?ボクシングは?口喧嘩すらなし?」

『なしです』

「なんだ、つまらない」


はん。と鼻で笑い、了はそっぽを向いた。しかしまたすぐにこちらを向いて、意地の悪い笑みを零す。

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