第94章 ほら、解決だろ
「せっかくの再会でいらっしゃるのに、随分と険悪なんですね?もしかして、あまり関係が上手くいっていなかったのでしょうか?」
「おい、ミナ。もうやめとけって」
「あら。そんな言い方、酷いじゃありませんか。私はただ、気を利かせているだけですのに。きっと積もる話もおありでしょうから、私達は席を外した方が良いんじゃないですか?」
席を外すだなんて言っているが、巳波は絶対に盗み見るに違いない。2人きりになった私達が、口論するところを。
私が断りを入れるより先に、振付師の方が口を開いた。
「いや、いいよ。せっかく今日は2人もレッスンに顔を出してくれたんだから。時間が勿体無いし、早速 始めようか」
『…2人もって。ŹOOĻは4人いるんですよ?もしかして、いつもはもっと集まりが悪いんですか?』
「まぁ。ゼロ、とかの日もあるよ?」
『最悪』
そんな最高のタイミングで、悠が何食わぬ顔で現れる。
「うわ、何この空気。最悪」
『最悪なのは、貴方達でしょう!』
「はぁ!?なんでいきなりオレがキレられなくちゃいけないわけ!?」
制服姿で現れた悠に、ぐいぐいと詰め寄る。
『遅刻の理由を聞きましょうか』
「遅刻って…べつにいいだろ。レッスン受けに来てやったんだから」
『受けに来て……やった?』
「うっ…」
私の 軽蔑と憎悪に濡れた瞳に、ビクッと小さく肩を揺らす悠。怯えようが反省しようが、答えを聞かぬまま話を流してなどやらない。
『もう一度、訊きましょうか。どうして、遅れたのです』
「べつに、ちょっと…学校の、用事」
『……貴方は学生。学業の関係で遅れるな、とは言いません。ですが、その旨の連絡は絶対にしてください。
報告連絡相談。ホウレンソウ。社会人の基本です』
「なんだよ…オレのこと…学生って、言ったばっかじゃん」
『確かに。でしたら訂正します。報連相は人間の基本です。貴方が人間をやっている限り、守ってください』
「人間やめたくないから、まぁ…分かった」
圧に押されるがまま、悠はあっさりと頷いた。押しに弱い人間は大歓迎だ。
「……」
(春人くん、こっちでも相変わらずだなぁ。TRIGGERと彼が出逢った頃をもう1回見てるみたい)