第94章 ほら、解決だろ
「普通?普通…なのか?いや、え?あれ…春人がこっちにいる時、こいつってどんな仕事してたっけ」
「少なくとも、野菜の歌は作ってなかったと思うけど」
「うーん…でも作曲は作曲なわけだし、普通…?なのかな」
3人揃えば何とやらと言うが、俺達はただ首を傾げた。すると了は、レコーダーで手遊びしながら言う。
「わざわざぁ この僕がぁ 君の為にぃ JA農協から取ってきたお仕事だよぉ?何が不満なのか分からないなぁ?」
『…不満ですよ』
「お野菜のCMに使われる歌の作曲、べつに普通の仕事じゃない?」
『普通じゃないです』
「えー?そうかな?うーん普通普通。だからほら、早く続きを作って僕に聴かせてくれない?」
エリは、俺の後ろで頭を抱え、苦しそうに何かを呻いている。やがて、目をカッと見開いて吠えた。
『やっぱり、ツクモではやっていけない!もう辞める!私にはピーマンの作曲は出来ない!!』
「あ、ランキングの4位と5位が出た」
天が、小さく呟いた。
「大丈夫だ!君にならきっと出来る!僕も協力するからさ。ほら、ピーマンのことを一緒にもっと知ってみようじゃないか」
了は言いながら、ポケットの中からピーマンを取り出した。
『ぎゃーー!あんた、なんて物をポケットに入れてるんですか!』
「緑のが駄目なら、他のはどう?赤いのも黄色いのもあるよ?ほら」
『やめて下さい!!言っておきますけどね!緑のピーマンが食べられない人間に “ パプリカなら食べられるよー ” って言う奴は、大概ピーマンが好きな人間なんですよ!こっちからしたら、緑でも赤でも黄色でも一緒ですから!べつにちょっと甘くなったからって好きになんてなれませんからね!』
俺は かつて彼女に、パプリカならきっと大丈夫だよ。と言い、サラダに入れてしまった過去を思い出したのであった。