第94章 ほら、解決だろ
エリは身を小さくして、俺の後ろに回り込んだ。その体は、少し震えている。
彼女を庇うようにして、俺は立ちはだかる。すると楽と天が、さらに前へと歩み出て、了を睨み付けるようにして言葉を紡いだ。
「おい。うちのプロデューサーをペット扱いたぁ良い度胸じゃねぇか。大体、こいつがこんなんなるなんて。あんた一体 春人に何やらせてんだ」
「もう君達のプロデューサーじゃないけどねー」
「はぐらかさないで下さい。普段は弱音を吐かない彼が、ここまでへこたれるんです。普通じゃない」
「べつに普通の仕事だけど」
俺も、エリを後ろに庇いながら加勢する。
「どのような仕事をさせているのか、詳細を教えてください」
「僕ってそんなに信用ないの?まぁべつにいいけどさー」
唇を尖らせながら、了は鞄をガサガサ始める。意外ではあるが、どうやら本当に仕事内容を教えてくれるようだ。
資料でも取り出すかと思われたが、彼が手にしたのはレコーダーだった。カチっと再生スイッチを押すと、そこから流れて来たのは…
春人の歌声。
《 ピーマン♪ピーマン♪ピーマン 緑は
元気な印!苦味は栄養 たっぷりだから!
ピーマン♪ピーマン♪ピーマン 赤いは
太陽と同じ!君も明るく 輝ける!
ピーマン♪ピーマン♪ピーマン 黄色は……
…っも、もう嫌だ!!頭がおかしくなる!毎日毎日ピーマンピーマンって!いい加減ゲシュタルト崩壊起こしそうなんですよ!大体ね!ピーマンの栄養価がいくら豊富であろうと、あんな苦いもんを食べるくらいなら他の食べ物から摂取してやりま 》
春人の発狂の最中、再生は止められた。了は にこっと微笑んで、俺達に告げる。
「ね?普通のお仕事だったでしょ?」