第12章 会いたい。死ぬほど
【side 八乙女楽】
どんなに良い女を見ても、胸が高鳴る事がなくなったのは いつからだろう。
いや、そんなのは分かりきってる。2年前のあの日から。
そう。あのライブハウスで、アイツを…Lioを、ステージの上で見てからだ。
憧れとか、嫉妬心とか、慕情が入り混じったこの気持ちを…
何と呼ぼう。
いや、とっくに分かりきってる。これは…
紛れもない、恋心。
こんなにも情熱的に語ってはいるが、実は俺と彼女の初対面は これではない。
俺が強烈な恋に落ちた日から、さらに遡る事半年。今から2年半前の事だ。
「よお」
「楽〜待ってたよ〜来てくれてありがとう〜」
俺が楽屋へ入るなり、勢い良く抱き着いてきた この女は MAKA。ダンスパフォーマーだ。
さばさばとした性格をした彼女とは、とても馬が合った。もう数年の付き合いになる。コイツがいたから、俺は男女間の友情がこの世に存在するのだと実感出来た。
「お前の日本でのラストステージだからな。そりゃ来る。ライブ頑張れよ」
MAKAは、このライブを終えるとロスへと旅立つ。仲の良い友人が離れていってしまうのは寂しいが。そんな事よりも、俺は彼女には絶対にもっと大きくなって欲しい。
エンターテイナーを志す者として、彼女の成功を自分の事のように祈る。そんな思いを込めてMAKAの体を抱き締めて 気合いを注入する。
…と、そんな俺を、まるで親の仇みたいな目で じっと見つめてるこいつこそが… Lio。
後に俺が、夢中になる女が、そこにはいた。