第12章 会いたい。死ぬほど
突如として、初対面の男と2人きりにされてしまった。
しかも相手は、大好きな先輩を弄ぶ スケコマシときている。さて、これからどうしたものか…。
「…俺は、八乙女楽。よろしくな」
意外にも、向こうの方から挨拶をした。私も名乗ろうかと思ったのだが。
やっぱり憎々しい気持ちが先行して 上手く口が回らなかった。でも無視するのも気が引けたので、ペコリと頭を下げる。
「お、なんだよお前…随分とシャイな奴だな。
はは。照れてんのか?可愛い奴」
『………』
自分の恋人の楽屋にて、彼女不在のタイミングで 他の女の子に甘い言葉を吐く。
私は、自分でも気が付かないうちに口走っていた。
『この、顔だけ男』
「…………は?」
「たっだいまー!!ん?どうしたの2人して固まっちゃって。あ、もしかしてダルマさんが転んだ?
あはは!私もやるー!」
と まぁ、これが私と彼の出会いというわけだ。
ちなみに、MAKAの日本ラストステージは大成功を収めた。私は今でもあのステージに、彼女と共に立てた事を誇りに思っている。
そしてやはり、1番近くであのダンスを見られたのは 本当に幸せだった。あの一分一秒が、今の私の礎になっていると言っても過言ではない。
MAKAは、もう日本にはいないけど。ダンスの本場 ロサンゼルスで今日も楽しげにステップを踏んでいる事だろう。