第94章 ほら、解決だろ
「え、プロ デューサー?」
「なんで、ここにお前が」
「春人くん!」
3人がそう発したのは、ほぼ同時だった。しかしエリはそのどれにも答えることはせず、ただ真っ直ぐに近寄ってくる。
そして、1番前に立っていた楽の体をガシっと掴んで言い放った。
『助けて。無理、辛い』
どれだけ聞きたいと思っていた言葉であっても、不意打ちでトリプルコンボをブッ込まれては、人は対応出来ない。たった今、それを身をもって知ったのだった。
俺も天も、縋られている楽本人でさえも、目を白黒させるばかりだ。
「俺の、聞き間違い じゃねぇよな」
「春人くんが言いそうにない言葉ランキング、1位から3位が揃うなんて…!」
「何?その変なランキング」
「え?4位は、もう辞める。5位は、出来ない。なんだけど」
「ごめん、べつに続きを聞きたかったわけじゃないから」
とにかく、彼女がこんなふうになるなんて尋常ではない。一体、その身に何が起こったのか。問い掛けようとしたところで、再びノックなしで扉が開く。
「あ、姉鷺!ちょうどよかった。春人の奴、とんでもなく様子が変……」
「おやおや ごめんねぇ?君達の所のオカマちゃんじゃなくって」
次こそは、姉鷺だと思っていた。しかし、俺達はまたも間違ってしまった。
今度の来訪者は、月雲 了。彼は悠々と両腕を広げ、三日月のように瞳を細めて告げる。
「ところで、僕の飼ってるカナリアちゃんを見かけなかったかな?ちょーっと目を離した隙に逃げちゃってさ!主人の居ぬ間にカゴを抜け出すなんて…悪い子でしょ?今度からは、首に縄でも付けておかなきゃ駄目かもしれないなぁ」