第12章 会いたい。死ぬほど
ノックの音が3回した後に、ガチャっと扉が開けられた。
「あっっ!!」
ピョンとソファから彼女が立ち上がる。そして、嬉しそうに扉から入ってきた彼を迎え入れる。
「よお」
そう。いまこの楽屋に現れた男こそ。八乙女楽だった。
一目見て分かった。彼こそ MAKAの恋人なのだと。
背が高い、顔が良い、声が良い。彼女から貰ったヒントが見事に全部ヒットしたから。
何より2人は、私の目の前だというのに熱い抱擁を交わしている。
「楽〜待ってたよ〜来てくれてありがとう〜」
「お前の日本でのラストステージだからな。そりゃ来る。ライブ頑張れよ」
ちなみに当時の彼は、TRIGGERとしてデビューはしていない。従って彼は、まだ ただの八乙女楽である。
抱擁を終えた2人。楽はずっと手に持っていた花束をMAKAに手渡した。
さすがスケコマシである。こういうところは抜け目がないようだ。私は完全に 楽の事を “ 遊び人 ” という色眼鏡で見ていた。
どのタイミングで席を外そうか考えていた時、突如MAKAの携帯が鳴った。
「もしもし〜?あっ!うん、了解!すぐに行くね」
マネージャーからの呼び出しであろうか?彼女は電話口でそう告げた。ちょうど良い。私も彼女と一緒にこの楽屋を出てしまおう。
そう思った矢先、MAKAは言う。
「楽、私ちょっと席外すから、この子とちょっとここで待っててー?」
「『えっ、』」
私と楽の声が、見事なハーモニーを奏でた。