第93章 選んだのは、こういう道だろ
あの4人は、了ほどではないが歪みを抱えている。それが、私の抱いた彼らへの印象であった。辛い過去か、妬みか羨みか、またまた別の理由からか。その根元に何があるのかは知れないが、いずれは理解したいと思っている。
今のところは、まだ彼らが心に何を飼っているか分からない。了のように、周りに危害を及ぼす類ではないと良いのだが。それはただの、希望的観測でしかない。
『…龍に、話しておかなきゃいけないことがまだある』
「どうしたの?」
『御堂虎於は、私と龍の関係を知ってるみたいなの』
「そうか、やっぱり…」
どうやら龍之介は、そのことに気付いていたらしい。それならば話が早いと、私は前置きもそこそこにして本題に入る。
『彼、もしかしたらそれをネタにして、私や龍に嫌がらせをするかもしれない。それだけじゃなくて、了にその情報が漏れれば、最悪TRIGGERにも被害が及ぶかも。
…察しが良い龍なら、私が何を言いたいのかもう分かるよね』
私だけが我慢を強いられたり、傷付く分には良い。しかし、それが龍之介やTRIGGERにまで及ぶことは耐えられない。
100%それを防ぐには、もうこうするしかないのだ。私が、龍之介の元を去るしか。
彼は何も言わず、こちらを食い入るように見つめていた。まるで、待っているようだ。私が、別れの言葉を口にするのを。
『…私が、普通の女の子なら良かったのにね。でも、そうじゃなくて本当にごめんなさい。
龍之介。私達、もう…終わりにし』
「エリの口から、その言葉は聞きたくない。そんな提案は、受け入れられないよ」
龍之介は私の言葉を遮って、そう強く言い切った。
「すぐに1人になろうとするのは、君の悪い癖だ」