第93章 選んだのは、こういう道だろ

虎於からは、自信しか伝わってこない。どうやらカマをかけてみた、なんてレベルの話ではないらしい。彼の言う通り、誤魔化しは無意味だろう。


『それは、了も知っているんですか？』

「いや、気付いてるのは俺だけだと思うぜ」

『では、どうして言わないんです？』

「あの人に言ったら、その時点でゲームは終わっちまうからな」


ゲーム？
そう問い掛けた私に、彼は愉快そうに告げる。


「あぁ。あんたに、龍之介よりも俺を選ばせるってゲームだ」

『ふふっ。あ、失礼。あまりの無理ゲー具合に、つい笑ってしまいました』

「そうか？難易度はそう高くないと、俺は思ってるがな」

『龍と別れて俺と付き合え。さもないと、どうなるか分かってるよな？…みたいなチートは、当然使いませんよね？』

「そんなセコイことして手に入れた物に、どんな価値があるんだ？」


私は、彼が卑怯な手段に頼らないよう先手を打った。彼の性格上、一度 口にした言葉は曲げないだろう。当面の間は、だが。

よほど自分に自信を持っている虎於だ。いつまで経っても私が振り向かないとなると、強引な手段を取る可能性も否めない。
例えば、龍之介と別れなければ了に関係をバラす。など。

そうなれば、私は…
一体、どうするのだろう。

別れなければ、確実に龍之介へ被害が及ぶ。下手をすれば、TRIGGERにも。

あぁ、もう考えることが多過ぎる。頭がこんがらがってしまいそうだ。


「俺のところに来いよ。あんたが今まで味わったことのないような、刺激をやる」

『やはり私達は、合わないみたいですよ？
だって私がいま求めているのは刺激などではなく、安息なのですから』

「普通の女みたいなことを言うんだな。あんた、そんなに面白みのない女じゃないだろ」

『買い被りですよ。私は、ただ1人の男しか愛せない、普通の女です。そして私は、心から龍之介を愛しています』


虎於は、片眉を微動させる。普段は感情を隠したがる、彼らしからぬ反応であった。よほど私の言葉が気に入らなかったのであろうか。