第12章 会いたい。死ぬほど
『…そうですよね。きっと、先輩なら 向こうでも あっという間に成功しちゃうんだろうなぁ』
私が尊敬する彼女の芸名は、“ MAKA ” 。本名を、真賀田 四季という。
日本では、彼女の名を知らない人はほとんどいない。特に若者を中心に人気を博しており、ライブが決まれば会場は超満員。いま最もホットな有名ダンサーだ。
私も 一目見ただけで、彼女の虜になった。今ではそんな大好きな彼女のダンスを、真後ろという特等席で見ているのだ。本当に、彼女と共にステージに立っている時間は 至福だった。
「エリちゃんも、アイドルになるって夢 絶対に叶えてね!私がいる所まで、その名前が聞こえてくるくらいに」
『はいっ!』
無邪気な私は、そう返事をした。
「…でもさー。アイドルって大変じゃない?」
『ダンサーだって大変ですよね?絶対』
ソファーの背に全体重を預けていたMAKAだったが、向かいに座った私に ぎゅんと顔を近づけて言う。
「アイドルとダンサーの、決定的に違う所ってどこだと思う!?」
『え…そりゃぁ、やっぱり歌うか歌わないか…』
うーん。と唸りながら答える私に、彼女は首を振った。
「全然違う。正解はね…
“ 恋人 ” を作れるか 作れないかよ!!」
あまりにもドヤ顔で言い放った彼女に、私は思わず なるほど…と妙に納得してしまう。
同時に、この人が 最強に恋愛体質だった事を思い出した。
簡単に人を好きになるし、好きになったらとことん追いかける。それが、また何故か悪い男ばかりに引っかかるのだ。
『…先輩、今はいるんでしたっけ?恋人』
「いるいるっ」
そう答える彼女は、完全に恋する瞳をしていた。