第12章 会いたい。死ぬほど
いつだったか、私は言った。
八乙女楽との初対面は、それはそれは最低なものだったと。
そして、その話の詳細については後日。とも告げたと思う。
あまり思い出したくない話ではあるが、今日は そんな彼と私の出会いについて語りたいと思う。
あれは、私が Lio としてデビューする半年くらい前。
だから今から約2年半前の事になる。
私には、尊敬しているダンサーがいた。どうしても彼女のように踊りたくて。技術を盗みたくて。
金銭なんていらないから、どうか私をバックダンサーで使ってくれと頼み込んだ。それは何度も何度もしつこく。
やがて根負けした彼女とスタッフが、テストを設けてくれて。それをパスした私は 実際に何度か彼女の後ろで踊る事が出来たのだ。
八乙女楽と私が初めて出会ったのは、2年半前。尊敬する彼女の、日本でのラストステージが行われる日だった。
『先輩、こんな大切な日にまで 私を使ってくれてありがとうございます』
「なーに、かしこまっちゃって。そういうのは全部終わってからにしてよね」
私は、彼女の楽屋にお邪魔していた。私達はもうビジネスパートナーとしてだけではなく、もっと親しい間柄になっていた。
プライベートで食事や買い物にだって行く。しかし、そういう機会はもう当分訪れないだろう。なぜなら…
『本当に、海外に行っちゃうんですね』
「やっぱり私もダンサーの頂点目指す者として、本場のステージで踊りたいからね」
彼女の海外行きが決まっていたからだ。