第92章 これでも頑張ったんだよ?
しばらく、優しい彼氏の体温を貪った。荒くれた心が、次第に整っていく。
「どう?落ち着いた?」
『ふふ。それってこっちの台詞。龍ってば、私よりテンパりまくってたよ』
「夕方には無傷だった恋人が、これだけの怪我負って帰って来たら誰だってテンパるよ!」
『面目次第もございません』
龍之介は私をソファに座らせて、丁寧に服を剥いでいく。勿論、ナニをする為ではない。
肩に冷却材を当てながら、全身をくまなくチェックされてしまう。彼に下心はないのだろうが、やはり羞恥心は募る。
「本当に、何でこんな傷だらけに…あぁ、こんなところにまで痣が」
『え、どこ?』
「背中の方の、ここ」
『いててて』
「あっ、ごめん!」
ツンと触れられたそこには、きっと酷い青痣があることだろう。
『あはは、大丈夫』
「君を、こんなふうに傷付けたのは誰?」
『私も同じくらい相手傷付け…いや、むしろこっちの方が酷い目に合わせたかも。
それよりさー、こんな傷じゃさすがに今日は出来ないね?』
「エリ。またそうやって誤魔化すのか?何があったのか、きちんと説明して欲しい」
龍之介は私の顎先をすくい、自分の方へ顔を向けさせた。2人の真剣な視線が交錯する。
『勿論、話す。でも、それは明日。ごめん。楽や天達と、同じタイミングで話させて』
「…つまり君が怪我を負った原因には、TRIGGERやツクモが絡んでるんだな?」
『えっと…だから、明日、話す』