第92章 これでも頑張ったんだよ?
『…解散』
「そう。解散。でもね、僕達が選んだのは、岡崎事務所からの離別だった」
「うん。だって、インディーズになったとしても、歌は続けられるから。まぁ、王座からは遠ざかっちゃうけどさ。
でも、それでも…まだ、ユキと歌っていられるでしょ?」
百と千は 互いの顔を見合わせて、にこっと笑った。その笑顔からは、後悔など一切見られない。自分達が選び取った道が最善であると、信じて疑っていないのだ。
「でもそのせいで、了さんの機嫌は損ねちゃったけどね。話が全然違うじゃないか!って、めちゃくちゃ怒鳴ってた!でも、命まで取りに来たのはさすがに予想外だったなぁ」
「僕らが独立すれば、少しは あいつの気持ちも晴れるかと思ったんだけど。もしかすると、むしろ逆効果だったかも。
だから、ごめんね。君達のこと、守れなかった。これでも頑張ったんだよ?」
『貴方達は…!2人は、馬鹿だ!』
私は震える声を抑えつけて、熱くなる目から涙が溢れないように、2人を罵った。
「エリ、ちゃん?」
「…大丈夫?」
『貴方が、1番守らなければいけなかったものは、TRIGGERでもIDOLiSH7でもない。Re:valeでしょう!それと、Re:valeのファンでしょう!
貴方達ほどのアイドルがインディーズになるなんて!これからの活動が、どれほど大変になるか、分かってるんですか?そう簡単に事務所には戻れないし、歌う箱を見つけるのだってどれほど苦労するかっ』
強く握りこんだ拳に、2人の手が そっと重なった。そして、朗らかな声で私を優しく包んでくれる。
「うん。分かってるつもり。でも、それでもね。オレ達は、諦めない。自分達が選んだ道で、戦っていくよ」
「そしていつか、必ず岡崎事務所に帰るんだ。それでまたメディアに沢山出られるようになる。それから、待ってくれていたファンの子達に言うんだ。
ただいま って」