第92章 これでも頑張ったんだよ？

通話が終わってすぐ、今度は百の携帯にかける。

しかし、なかなか出てはくれなかった。呼び出し音が続けば続くほど、私の心臓は嫌な高鳴り方をしていく。


《 も、もしもし？どうしたの？珍しいね！春人ちゃんの方から連絡くれるなんて！》

『百さん、いま御自宅ですか？』

《 えっ？いやいや、違うよ！？今ちょーっと出かけててさ！実は結構忙しかったりするんだよね！》

『そうですか。でしたら、私が今から百さんの御自宅へ伺っても問題ありませんよね？』

《 えぇ！？ダ、ダメダメ！それはダメ！ごめん！オレ間違えちゃった！いま家に居るんだけど、もうすっごい立て込んでるから！だから絶対来ちゃダメだよ！来られたら困っちゃう！じゃ！》


ツー ツー と、無機質な音だけが残された。
暗転した画面に、小さく呟く。


『…どうやって、自分が家に居るか居ないか間違うんだろ』


明らかに、百はおかしかった。千の言う通りだ。彼は何かを必死で隠している。

私は、また携帯を取り出した。次にかけたのは…


《 もしもし？おい、あんた大丈夫か？昨日のライブ、なんつーか…大変だったな。俺らもびっくりし 》

『それは置いておいて、大和。ちょっと教えて欲しいことがある』

《 ん？あ、もしかしてRe:valeの？急に独立だもんな。俺もびっくりしたよ。だから、分かることは何もないぜ？寝耳に水だったもん 》

『私が知りたいのは、百のこと。
彼、家に居るのに、私に絶対に来るなって。来られたら困るって。本当に私が会いに行ったら、迷惑なのかな』

《 はい？何言ってんの ありえないでしょ。それ、絶対なんか隠してるから。昨日も言ったけど、あの人らがエリに対してそういう態度取る時は…天変地異ばりの、何かが起きてる時だ 》

『…ん。ありがとう。自信付いた』

《 おいおい。一体なんの自信付けちゃっ 》


私は大和にお礼を述べてから、通話を終わらせた。