第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
そこから、1時間くらいミーティングを行った。初めは動揺を隠せない様子だったが、なんとか4人を説得することに成功。最後には皆んな、しっかりと頷いてくれた。こんなにも心強いことはない、そう思った。
勢いをそのままに、社長にもこの旨を話したいと思い立つ。受話器を取りながら、ふと思った。
昨日あんなことがあったにも関わらず、彼からの呼び出しは なかった。少し不自然だと思っていたのだが、きっと彼も必死に考えていたのではなかろうか。
TRIGGERを生かす、道を見出そうと。
すぐに打ち合わせようという流れになる。しかし、場所はいつもの社長室ではない。
彼が指定したのは、談話室。重要な案件を話す際、その場所を彼が選んだのは初めてのことだった。
私は了承し、受話器を置く。そして、すぐにそこへ向かって歩き出した。
窓から差し込む、赤い赤い夕陽の色が、私の目を眩ませる。
申し合わせた部屋に着くと、そこにはもう彼がいた。驚かせてしまわぬよう、わざと音を出して その背中に近付く。
『お待たせしました』
「いや」
こちらを振り返ることなく、彼は短く答えた。
数多くのトロフィーや優勝カップが、私と社長を見守っている。
そして、芸能事務所には あまり似付かわしくないバーカウンターや酒瓶も、そこにはあった。
テーブルの上には、ロックグラス。その中には、甘い香りのする琥珀色の液体が入っている。
既に中身は少なくなっていて、氷も小さく消え入りそうだ。
この時間から飲んでいるのか。そう思い、私も席に着いて、社長の顔をチラリと見やる。
そこには、覚悟を決めた顔の男がいた。