第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
考えて考えて考え抜いて、私はある策戦に辿り着いた。これに一度行き着いてしまえば、もうこれが答えだとさえ思えてくる。
我ながら、大胆で馬鹿げた抜け道だと思う。この裏技を、どうやって説明したら、皆んなに分かってもらえるだろう。とりあえず、説得する時用の資料でも作ってみるか。
そう思い、パワーポイントを開いたとき。TRIGGERと姉鷺は帰還した。
「はい、帰ったわよ。あんまり疲れてないけど。はぁ…もっとガッツリお仕事したいわねぇ」
「お、なんだよ。聞いてたより、全然 顔色良いじゃねぇか」
「プロデューサー。昨日は寝れなかったんでしょ?キミって意外と繊細だよね」
「でも良かった。少しは休めたみたいで。
あ、これ お土産。おつなな寿司のイナリだよ。余ってたから、楽屋から持って帰って来ちゃった。春人くん、これ好きだもんな」
3人は、全くの通常運転だった。私よりも、他の誰よりもキツい立場だというのに。傷付いていないはずはないし、ショックを受けなかったわけじゃないはずだ。でも、こうやって笑顔を絶やさない。
彼らは、プロのアイドルだ。そう再認識すると同時に、自分がちっぽけだと思い知らされるようだった。
『動けずいたのは、私だけだったんですね。貴方達は、本当に格好良い』
「ふ、当然でしょ」
「春人、立ち止まってんなよ。その間に俺達は、前へ進むぜ」
「俺は、春人くんを置いて行ったりしないけどね」
「おい龍、お前な!ちったぁ足並み揃えろ!」
「あはは。ごめん、楽」
「はぁ…頼りない大人達」
楽と龍之介が楽しそうに取っ組み合いをする横で、天は薄く笑う。
そんな3人を背に、姉鷺は私に向き直った。
「で?何を思い付いたのかしら。早く教えなさいよ」
『私が打開案を考え付いたと、よく分かりますね』
「それくらい、顔を見れば分かるわ。アタシはね、人の顔色見てその人の心中を察するのが得意なの。ほら、勿体ぶらないで早く言って」
『まだ資料は出来てないのですが…はい。お話します。天も、楽も龍も、ぜひ一緒に。そして、忌憚のない意見を、聞かせてください』