第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
「その間に、少し休むのね」
『姉鷺さん…』
「疲れてるから、悪い方に物事を考えちゃうのよ」
姉鷺のこの言葉で、私はさきの独り言が聞かれていたのだと悟る。意識して、顔を上に向ける。すぐに、姉鷺の綺麗な顔が目に入った。
昨夜の出来事は、彼にとっても衝撃だったはずなのに。私とは違い、肌艶も綺麗で、目の下にクマもなかった。
『…姉鷺さんは、プロですね。やっぱり』
「ふん。今さらね。でもありがとう。そう言われると、悪い気しないわ。
どれだけ辛い時であっても、目を閉じれば10分で眠れる。これが出来て初めてプロよ。アンタも精進なさい」
『ふふ。はい』
頭の上に、ふわりと手が乗せられる。
「…あの子達には、とっくにアンタが必要なの。だから、どこかに消えようだなんて考えないでちょうだい」
『……』
「4人で出した答えなんでしょ?アンタがここに立っているのは。だったら最後まで貫いて。
アタシも、頼りにしてるんだから。いいわね?」
『はい。少し休んで、それからまた考えます。TRIGGERを守る方法を』
そう告げると、姉鷺は綺麗な唇の片端を上げる。そんな彼の姿を、廊下の向こうに消えるまで見送った。
それから、私はソファに寝転がる。部屋に鍵を掛けて電気を消し、ブランケットを被った。
姉鷺からもらった大切な時間を、無駄にはしない。なるべく頭を空っぽにして、目を閉じる。
目を閉じてから、眠りに就くまで30分も要してしまった。どうやら私は、プロにはまだまだ遠く及ばないらしい。