第91章 相変わらずの強欲っぷりだな
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《 Whaleライブ!あのTRIGGERが前座!?トリを務めた、謎のアイドルに迫る!》
《 世紀のジャックライブ!!4人組 男性アイドル “ ŹOOĻ ” とは?》
《 ツクモの隠し球!Whaleこけら落としライブという大舞台で、ついに降臨!》
私は、全ての新聞と芸能雑誌を放り投げた。
乾いた目を閉じれば、昨夜の光景が嫌でも思い起こされる。まるで、悪夢だ。
最高の、ライブになるはずだった。私は一体、どこで間違ったのだろう。
そんなのは考えるまでもない。
あの悪魔に持ち掛けられた契約を、蹴った瞬間からだ。そこから、全ては狂っていった。
『やはり、私は… あの男のところに行くべきなのか』
「鍵。貸しなさい」
1人だと思っていた部屋から、姉鷺の声がした。今の独り言を聞かれただろうか?
問い掛ける前に、彼はまた同じ言葉を口にする。
「ほら!だから車のキーよ。早く貸して」
『え、あ はい。すみません。ですが、私もこれからTRIGGERの送迎で社用車を使うのですが…』
姉鷺の剣幕には勝てなくて、ついつい私はキーを彼に手渡してしまった。
それをギュッと握って、彼は溜息混じりに告げる。
「アンタね。自分が今どんな顔してるか分かってるの?」
『あー…はぁ、まぁ』
「はぁ、まぁ、じゃないわよ!いつもの覇気さえどっかやっちゃってんじゃない!
そんな一睡もしてません。みたいな顔した奴に、うちの子達任せられないのよ。途中で事故でも起こされたら、たまったもんじゃない。
と に か く!TRIGGERは私が送るわ」
『…異議は』
「認めるわけないでしょうよ」
ですよね。私は項垂れて呟いた。